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2016年11月6日日曜日

【数学】 無限小解析の世界(その6)

今回は超実数の公理がバージョンアップする。

実数の完備性が、標準部分定理で置き換えられる。

超実数の公理(version 2)
  1. Rはアルキメデス順序体である。
  2. R*はRの真拡大順序体である。
  3. (標準部分の公理)任意の有限超実数はちょうど一つの実数に無限に近い。
  4. (関数の公理)任意のn変数実関数fに対し、fの自然延長と呼ばれるn変数超実関数f*が「対応する」。(特にR*の体演算はRの体演算の自然延長である。)
  5. (解の公理)二つの式系がちょうど同じ実解を持つ、ならば、それらはちょうど同じ超実解を持つ。

アルキメデス順序体とは・・・




アルキメデス順序体:

Fを順序体とする。Fの任意の元aに対して、aより大きい正整数n=1+・・・+1が存在するとき、Fをアルキメデス順序体と言う。

ついでに。


完備順序体:

Fを順序体とする。上に有界なFの任意の空でない部分集合がFの中に最小上界(上限)をもつとき、Fを完備順序体と言う。

二つの概念の関係について。

完備順序体はアルキメデス順序体である。

参考
http://okwave.jp/qa/q4998513.html
「Fの任意の元aに対して、aより大きい正整数n=1+・・・+1が存在する」を「アルキメデスの性質」
「上に有界なFの任意の空でない部分集合がFの中に上限をもつ」を「ワイエルシュトラスの性質」と呼んでいる。(ここでは定理なのか、公理なのかは区別しない。)

証明は背理法を使う。

Fは「ワイエルシュトラスの性質」を満たすが、「アルキメデスの性質」を満たさないとする。

アルキメデスの性質
\[
\forall x \in F \;\; \exists n \in N \;\; x < n \] これの否定をとり、 \[ \exists x \in F \;\; \forall n \in N \;\; x \geq n \] つまり、任意の正整数に対して、それ以上に大きいxを見つけることができる。このような要素を集める。 \[ B = \left\{ x \in F | \forall n \in N \;\; x \geq n \right\} \] AをF-Bとする。(F=(A,B)はFのデデキント切断になっている。また、Aには正の整数全体の集合が含まれている。Bに正の整数は含まれていない。) ワイエルシュトラスの性質より、Aには上限が存在する。これをsとする。 \[ s = \sup(A) \in B \] \[ s - 1 \in A \] Aはアルキメデスの性質を満たす集合であるので、 \[ \exists n^{\prime} \in N \;\; s-1 < n^{\prime} \] 順序体の性質より、両辺に1を足しても不等号の向きは変わらない。 \[ \exists n^{\prime} \in N \;\; s < n^{\prime} + 1 = n^{\prime \prime} \] これはsがあらゆる正の整数より大きいという言明と矛盾する。従って、ワイエルシュトラスの性質が成立しているならば、アルキメデスの性質も成立していなければならない。 よって完備順序体はアリストテレス順序体である。

超実数の公理 version 1とversion 2が同値であること

version 1 ⇒ version 2は上の議論からOK。

version 2 ⇒ version 1を導出する。

あるRの空でない部分集合で上に有界であるものをXとする。(例えば{0})

次のような関数fを決める。
\[
f(y) = \left\{ \begin{array}{l l} 1 & yはXの上界である \\ 0 & yはXの上界ではない \end{array} \right.
\]
Xは空集合ではないので、f(a)=0なるaが存在する。(例えばa=0)
Xは有界であるから、f(c)=1なるcが存在する。a < cである。 tを任意の正の実数として、 \[ \frac{c-a}{t} < n \] なる正の整数が存在する(アルキメデス性)。 つまり、 \[ \forall t \in R^{+} \;\; \exists n \in N \;\; c < a+nt \] 次を満たす最小の正整数n0が存在する。 \[ f(a + n_{0} t) = 1 \] つまり、 \[ f(a + n_{0} t - t) = 0 , \;\; f(a+n_{0} t) = 1 \] 他方で、 \[ \frac{c-a}{t} < n_{0} < \frac{c-a}{t} + 1 \] なので、 \[ c < a + n_{0}t < c + t \] ここまでで次のことが言える。 \[ \left\{ \begin{array}{l l} S : & 0 < t \\ T : & f(u-t)=0, \;\; f(u)=1, \;\; c < u < c +t \end{array} \right. \] 式系Sの実解はすべて式系Tの部分実解である。 従って、部分解定理より、式系Sの超実解はすべて式系Tの部分超実解である。 そこで、ある正の無限小超実数t'をとる。t'はSの超実解であるから、これをtに代入した式系T' \[ f(u-t^{\prime})=0, \;\; f(u)=1, \;\; c < u < c +t^{\prime} \] を満たす超実数u'が存在する。u'は有限超実数であることも分かるから、標準部分の公理よりb=st(u')をとれる。

他方、
\[
\left\{ \begin{array}{l l} U : & w < z_{0}, \; f(z_{0})=0 \\ V : & f(w)=0 \end{array} \right. \] この二つの式系の実解は一致しているので、解の公理より、超実解も一致する。 従って \[ z_{0} = u^{\prime} - t^{\prime} \] と置くことにより、 \[ w^{\prime} < u^{\prime} - t^{\prime} \Rightarrow f(w^{\prime})=0 \] よって、 \[ \mbox{st}(w^{\prime}) < b = \mbox{st}(u^{\prime}) \Rightarrow f(\mbox{st}(w^{\prime}))=0 \] つまり、bより小さいXの上界は存在しない。

同様に、
\[
\left\{ \begin{array}{l l} U^{\prime} : & w > z_{0}, \; f(z_{0})=1 \\ V^{\prime} : & f(w)=1 \end{array} \right.
\]
この二つの式系の実解は一致しているので、解の公理より、超実解も一致する。

従って
\[
z_{0} = u^{\prime}
\]
と置くことにより、
\[
w^{\prime} > u^{\prime} \Rightarrow f(w^{\prime})=1
\]
よって、
\[
\mbox{st}(w^{\prime}) < b = \mbox{st}(u^{\prime}) \Rightarrow f(\mbox{st}(w^{\prime}))=1
\]
つまり、bはXの上界になっている。

故にb=st(u')はXの上限である。

* * *

今回は問題はありません。