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2016年11月4日金曜日

【数学】 無限小解析の世界(その4)

今回は実数と超実数の関係。特に「標準部分」について。

問題1.monad(0)はgalaxy(0)の極大イデアルであることを示せ。つまり、galaxy(0)のイデアルIで、
\[
\mbox{monad}(0) \subset I \subset \mbox{galaxy}(0)
\]
なるIが存在しないことを示せ。



解答1.これは次のように証明される。上の式が仮に正しいとして、矛盾を示す。
\[
b \in \left\{ I - \mbox{monad}(0) \right\}
\]
というbが存在する。bは無限小ではないから、その逆数b^(-1)は無限大ではない(前の性質5を使った)。なので、
\[
b^{-1} \in \mbox{galaxy}(0)
\]
従って、Iはgalaxy(0)のイデアルだから、
\[
1 = b \cdot b^{-1} \in I
\]
cをgalaxy(0)の任意の要素とすると、
\[
c = 1 \cdot c \in I
\]
つまり、
\[
I = \mbox{galaxy}(0)
\]

標準部分

ここからが重要。
標準部分定理:

任意の有限超実数はちょうど一つの実数に無限に近い。すなわち、任意の有限超実数の単子は実数をちょうど一つ含む。

(存在)任意の有限超実数xの単子monad(x)が必ず実数を含むことを示す。

xは有限超実数であるから、定義より
\[
|x| < r \leftrightarrow -r < x < r \] なるrが存在する。 次のような実数の集合X(x)を考える。 \[ X(x) = \left\{ s \in R | s < x \right\} \] X(x)は空ではない。というのも、-rが含まれているから。またX(x)は上に有界である。というのもX(x)の任意の要素sは必ずs < rとなっているから。 X(x)は空でなく、上に有界なので、必ず上限(実数)を持っている。これをtと置く。 tは上限なので、 \[ t < x \] で、さらにtに任意の実数uを加えるとX(x)から飛び出してしまう。 \[ t + u > x
\]
逆に差し引いても、常にX(x)の範囲内に収まっているので、
\[
t - u < x \] 従って、両方合わせて、 \[ -u < x - t < u \leftrightarrow |x-t| < u \leftrightarrow x \sim t \] つまり、monad(x)の中に少なくとも一つは実数tが存在している。

(一意性) monad(x)の中に含まれる実数は一つのみであること。

仮にrとsという実数がmonad(x)に含まれているとする。
\[
r \sim x , \;\; s \sim x
\]
従って、
\[
r \sim s \rightarrow (r-s) \sim 0
\]
しかし、(r-s)は実数なのであり、0に無限に近い実数は0しかない。
\[
r - s = 0 \rightarrow r = s
\]
定義:

有限超実数xに対して、x~rとなる唯一の実数rをxの標準部分と言い、
\[
r = \mbox{st}(x)
\]
と書く。

xが無限大のときは標準部分は定義されない。

標準部分についての幾つかの性質。
  1. x~st(x)
  2. r ∊ R ⇒ st(r) = r
  3. x~y ⇔ st(x)=st(y)
  4. x ≦ y ⇒ st(x) ≦ st(y)
  5. 正及び負の無限小超実数が存在する
  6. 正及び負の無限大超実数が存在する

1)について。st(x)はmonad(x)の中に含まれているのだから、x~st(x)

2)について。monad(r)には実数が一つしか含まれないのだから、r=st(r)

3)について。x~yよりmonad(x)=monad(y)である。なので、これに含まれる実数がただ一つであることからst(x)=st(y)

逆にst(x)=st(y)とすれば、x~st(x)=st(y)~y より x~y

4)について。x=st(x)+ε、y=st(y)+δと置く(このように表現できる)。εとδは無限小超実数。等号の場合は自明なので、等号でない場合のみ考えてみる。
\[
x < y \rightarrow \mbox{st}(x) - \mbox{st}(y) < \delta - \epsilon \] 不等号の右辺は無限小の差なので無限小。なので、任意の正実数rに対して、 \[ \mbox{st}(x) - \mbox{st}(y) < \delta - \epsilon \leq |\delta - \epsilon| < r \] もし、 \[ \mbox{st}(x) - \mbox{st}(y) > 0
\]
とすると、左辺はある正の実数が存在するということを言っている。しかし、これは任意の正実数より小さいという言明と矛盾する。なので、
\[
\mbox{st}(x) - \mbox{st}(y) \leq 0 \rightarrow \mbox{st}(x) \leq \mbox{st}(y)
\]
でなければならない。

5)について。公理よりR*はRよりも真に大きく、R*-Rの要素xが存在する。xは有限超実数か、無限大超実数のいずれかである。

前者の場合、x-st(x)が無限小超実数である。仮にこれをεとすると、εと-εは正と負の無限小超実数である。
後者の場合、x^(-1)が無限小超実数である。

6)について。正と負の無限小超実数が存在しているので、それぞれの逆数をとれば、無限大超実数が得られる。

標準部分写像の性質:

標準部分をとる写像stは環galaxy(0)から実数体Rの上への準同型写像である。すなわち、
\[
\mbox{st}(x+y) = \mbox{st}(x) + \mbox{st}(x)
\]
\[
\mbox{st}(x-y) = \mbox{st}(x) - \mbox{st}(x)
\]
\[
\mbox{st}(xy) = \mbox{st}(x) \mbox{st}(x)
\]

x=r+ε、y=s+δと置く。

\[
\mbox{st}(x+y) = \mbox{st}((r+s) + (\epsilon + \delta)) = r + s
\]
同様に
\[
\mbox{st}(x-y) = \mbox{st}((r-s) + (\epsilon - \delta)) = r - s
\]
同様に
\[
\mbox{st}(xy) = \mbox{st}((rs) + (\epsilon s + r \delta+\epsilon \delta)) = rs
\]

問題2.x、yを有限超実数とする。次を示せ。

1)
\[
\mbox{st}(y) \neq 0 \rightarrow \mbox{st} \left( \frac{x}{y} \right) = \frac{\mbox{st}(x)}{\mbox{st}(y)}
\]
2)
\[
y=\sqrt[n]{x} \rightarrow \mbox{st}(y) = \sqrt[n]{\mbox{st}(x)}
\]

解答2.

1)
\[
\mbox{st}(x) = \mbox{st} \left( \frac{x}{y} y \right) = \mbox{st} \left( \frac{x}{y} \right) \mbox{st}(y)
\]
2)
\[
\mbox{st}(x) = \mbox{st} \left( y^{n} \right) = \left( \mbox{st}(y) \right)^{n}
\]

今回はこの辺で。